「やる気」を生み出すコツ

2016/9/1
「やる気」を生み出すコツ(第3回)

『やる気は2つに分けられる』
 「やる気は、自分でしか上げることができない。なぜならば、『やる気が上がった』という感覚を感じ取れるのは、自分だけだからである」
 今回は「やる気」のお話しをしたいと思います。冒頭の文章を読んで皆さんはどのように感じましたか? やる気を出したい……しかし、なかなかうまくいかない。正直なところ、ちょっと面倒。
 このようなことは誰にでもあることです。しかし、「やる気とは何か」をしっかりと理解していけば、誰でも自分自身のやる気を上げていくことは可能です。ここで、やる気とは何かを探っていきましょう。
 誰しも、好きなこと、面白いこと、楽しいことに対しては、やる気はがぜん高くなり、時間も忘れて没頭してしまうことがあります。それに対して、面白くないこと、複雑なこと、罰がついた時などは、なかなかやる気は上がらないのではないでしょうか。
 ここでわかるのは、やる気にも種類があるということです。人それぞれ感じ方は違いますが、人間のやる気は大きく2つに分けられます。

『内発的なやる気と外発的なやる気』
 1つ目は内発的な「やる気」です。これは、内側から湧き上がるやる気で、好きだからやる、楽しいからやる、面白いからやる。つまり、自ら進んでやろうとするやる気です。
 もう1つは外発的な「やる気」。外からの刺激でやる気になるもので、怒られるのが嫌だからやる、罰が嫌だからやる、ご褒美や結果・評価・比較・ランキングなどのためにやる。つまり、やらされる「やる気」です。2つの「やる気」を簡単にいえば、「自分でやる」か「人からやらされる」かになります。
 ここで、一つの理論を紹介しましょう。エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱する「自己決定理論」です。この理論では、前述したやる気の変化や分類を説明しています。
 初めは誰しも「仕方ないからやろう……」といった、やらされている状態にあることがありますが、この状態から徐々に
「一応やろう」→「とりあえずやろう」→「もう少しやろう」→「やってみるか」→「もっとやってみたいな」と、いうように内発的な「やる気」へ変化していくことを明らかにしています。
 ここで重要なことは、このように徐々に内発的にやる気が高まっていくには自己決定が必要になるということです。自分の決定や選択をしていく力が育っていく中で、徐々に内発的なやる気が高まっていくのです。これを「内在化」と呼びます。
 たとえば、「上司にこの企画を成功させなさい。その際はこのように進行していきなさい。ホウ・レン・ソウを常に怠らないように」といった具合に、すべての決定や選択を他人がやってしまう作業や、こと細かく詳細まで行動を決められた作業は、どうしても内発的なやる気が上がりにくく、やる気も初めの一時しか上がらないといったことがよく起きます。

『目標をやや低めに設定する』
 このようなときは、まずその状況下で何から始められるかを考え、第一歩目の目標をやや低めに設定し、自分でコントロールできることと、コントロールできないことを分析し、改めて自分のプランややり方、自分のペース配分、優先事項のリストアップや進め方の骨組みをイメージするところから始めていくようにします。
 自己決定の質と、自己選択の質、自分の小さな目標や指標、成功イメージ、わずかなチャレンジができる進め方から始めていくことで、自分自身の気づきや発見・工夫が多くなり、少しずつ「やってみよう」という内発的なやる気が高まっていきます。
 スタート時点においては、外発的なやる気でもかまいません。やらされている状態から、徐々に自ら進んで自分のペースで行動していく、内発的なやる気に高まっていくことが成功につながるのです。つまり、やる気を育てていく期間こそが、非常に重要なのです。
 研究の結果、トップアスリートやトップビジネスパーソンたちは、前者の内発的なやる気をつくり出すことが上手いということがわかりました。また、その内発的なやる気を自分の中で育てていくことが習慣になっていることもわかりました。

『内発的なやる気を高めるコツ』
 やる気を育てる際の注意事項として、
① 面倒くさいと思っても、簡単な第一歩を自分で決めて行う(デスクに座ろう・5分後から始めよう・まず情報を集めよう、などどのようなことでもよい)
② 失敗やミスをしてもすぐに次のやり方を模索する(ミスから学ぶ。ミスも肯定的に受け止め、成長の情報源とする)
③ 上手くできたことも、さらに洗練させていく(素敵なことはさらに素敵にさせる)
④ 小さな「いけそうだ・できそうだ」といった感覚をイメージできるプランを考える(この感覚は最初は小さいものでよく、少しずつ育てる)
 やる気は、上司や尊敬する先輩また家族からの励ましなどによって確実に上がっていくものです。しかし、このような外発的な刺激をどのように内発的なやる気に育てていくことができるかが重要であり、それは自分のアクションから可能になるのです。
とはいえやはりここはトレーニングが必要です。最初は小さな内発的な火を、皆さん自身の決定・選択・工夫から大きく育ててみてください。