「コリン・ローズの加速学習法」 

     ■■    コリン・ローズ   ダイヤモンド社(2004.9.30)   ■■

 コリン・ローズは1983年に「加速学習法」を発表。
 この加速学習法を使って一流の国際企業に対し従業員教育を実施、さらに就学前の児童教育プログラムの開発にも手がけるなど数々の実績をこれまで残してきた。
 また、加速学習法自身の改良も重ね、1992年に『コリン・ローズの加速学習法―「学び方」のまなびかた』を発刊。当書は、一度絶版になり、ヤフーオークションで高値で取引されたこともあったそうだ。
 今回紹介するのは2004年に出された『実践テキスト版』で、2005年9月に第3版を重ねる。

 全体に目を通して感じたことは、集中力、潜在意識、マインドマップ、速読法、文章作成法、呼吸法など、勉強法に関するスキルはくまなく収められているということだ。
 勉強の方法について、これまで本を読んだり学んだりしたことがない人は、この1冊で、飛躍的な進化を遂げることができるだろう。
 しかし、kougaiのような勉強法マニア(笑)には、章ごとを1冊の本にしてもよいくらい盛りだくさんの内容になっている当書は、お得すぎて、なんだかプライドが許さない。
 いずれにしても、この本で紹介される勉強法は、実践しないことには、何の価値も生み出さない。勉強法のたぐいは、ただ知識として持っていてもだめだ。
 この本の中身を実践することで身につける能力は次のとおり3つある。
○短時間で学習する能力
○適切な意思決定を行う能力
○創造的思考の能力
 これだけ身につければ、あなたの「雇用価値」、「市場価値」は、みるみる上がり、競争社会で負けることはなくなるだろう。
 この本の特長は、たくさんの学習テクニックを提示していることで、読者は、その中から自分にあったスタイルを選ぶことができるようになっていることだ。
 さらに、勉強法を学ぼうとする方のなかには、自分のためでなく、教育者や親として学びたい人もいるはずだ。本書は、会社の教育担当者、教育する親の立場にもたって書かれている。
 本書は、この手のノウハウ本としては200ページ以上の分量があり読み応えがあるが、ページ数に惑わされ、通り一遍に読んでしまうと、勉強法という知識を手に入れるだけで終わってしまうだろう。急ぐ人は「まえがき」を真剣に読むだけでもいいと思う。
 まえがきにはこう書かれている。

【線形思考から球形思考へ】
 いくら努力しても成績が上がらないのは、徐々に細かく情報を積み上げていく線形思考に陥っているからだ。
 勉強するときは、脳の一部でなく、全体を関与させるような球形思考に変えていく。たとえば、メロディと言葉、全体と細部というように、脳の異なる機能を立体的に組み合わせて勉強すると効果が高いそうだ。
 ノートに色のマーカーを使うだけで覚える効率が上がるのも同じ理由だ。
 色彩、イラスト、ゲーム、音楽などをフルに使って教えるのは未就学児だけでなく、大人でも十分通用する。

【積極的学習】
 勉強ができないのは、
・自信がないから
・体系的な取組の欠如
・自分にあったスタイルを確立していないことからきている。
これを打破するには、勉強法を知識として理解するのではなく、立ち止まって、か自分の問題に置き換えて、じっくり考えながら進むことである。
 これは、読書法にも通じる。
 読書しても、読み進むうちから、前に読んだことを忘れるとこぼす方がいらっしゃる。
 そういう方は、著者と会話しながら読み進めるとよい。
 読みながら、本に気づいたこと、疑問に思ったことをどんどん書き込んでいく。
 一番いいのは、kougaiのように、本の著者と対等になったつもりで、中身を紹介することであろう。中身の説明を責任をもって引き受けるのである。ときには、傲岸不遜に著者を見下したっていい。飲み込まれるより飲み込んだ方が、全体を把握することができる。
 恐らく、ほとんどの人が、勉強法を始めるに当たって最初に解決しなければならない問題は、「やる気」である。
 この、心の問題を解決しないことには、一歩も先に進むことはできない。
 「毎日スキルアップ通信」を講読していただいている皆さんは、「やる気」がどの段階にあるだろうか。
1 勉強したいことが見つかり、すでに勉強を始めている方、
2 勉強したいことは見つかっているのだが、やる気が起きない方、
3 このままではいけないと感じているのだが、何から始めるか、まだ決まっていない方。
 問題は2番目と3番目である。
 本書の第1章「成功をもたらす心の準備」は、上記の2番目と3番目に当てはまる方はぜひ読んでいただきたい序章となっている。
 kougaiも、偉そうに言っているが、疲れて会社から帰ってきて、机に向かうとき、つらいものがある。疲れていなくても、テレビも観たいし、雑誌も読みたいし、ほかにもしたいことは、たくさんある。
 これらのたくさんの選択肢の中から「勉強」を選ぶのは、相当な抵抗がある。
 がんばらないといけないことは、人に言われなくても自分自身が一番わかっているのだ。
 ここは人生の分かれ道。
 凡庸な人生に埋もれるか、生き生きとした人生の一歩を踏み出すかの分かれ道。
 手近な楽しみよりも勉強を選ぼうとする意欲を高めるには、次の3つのポイントが必要であると「加速成功法」では説明する。
1成功したときの自分をありありとイメージできるような明確な目標
2自分で決めたことを自分は決して裏切らないという自分に対する自信
3必要なときにいつでもリラックスできる技
 めんどうなことを先送りするなど、安きに流れる自分は、実は学習された態度であり、本当の自分ではない。いつも自分はだめだと思っていればだめになるし、長続きしないと思えば長続きしない。これらの態度は学習された結果であると本書では説く。
 試験に合格した未来の自分でもよいし、過去に勉強してよい結果を出したときの自分でもよい。勉強に関する「成功体験」をイメージする訓練から始めるとよいそうだ。
 何度も「成功体験」をイメージすることで、力が出やすい精神状態を自在につくることができるようになる。
 イメージと事実は紙一重である。梅干しを思い浮かべれば酸っぱい唾液がこみあげる。恋愛している頃に聞いた音楽を聴けば胸が切なくなる。顔から火が出るような失敗をしたときのことを思いだせば心は暗くなる。マジックでもオカルトでもない。当たり前のことを何度も繰り返せばよい話だ。
 1日に何度も、成りたい自分に成れたときの自分をイメージする。
 試験に合格した自分、営業やプレゼンがうまくいった自分、人とのコミュニケーションが上手にできるようになった自分など、人によって様々であろう。
 加速学習法では、肯定的な断定表現をアファメーションと呼ぶ。
 大勢の人前で上手に話せるようになりたい人は、「私はスピーチに自信がある」を繰り返す。マイナスのイメージをはねのける癖をつけることが必要だ。
 しかし、こころの中で否定の言葉を聞いたり、悪いイメージに捕まることがある。繊細な感情を持った人間だからこそ、当たり前に起きる現象だ。このような「潜在意識の妨害工作」に遭ったときは、逃げずに、しっかりそれを意識するようにする。そのようなマイナスの感情に襲われたときは、「意識的に席から立ち上がる」、「外を歩く」、「コーヒーを飲む」など、体を動かすような癖をつけることが大切だ。「大きく深呼吸をして、リラックスする」でもよい。そして、改めて成功体験をイメージする。つまり、正しいアファメーションに置き換えるのだ。
 明確な目標を持ち、精神状態を自らよい方向に操作できるようになったら、成功をもたらす心の準備は、ほぼ整ったと言ってよい。
 昨日は、勉強を始める前に必要な心の準備について解説した。
 今日は、第2章「事実を収集する」の概要を説明する。
 勉強は、知識の獲得から始まる。
 効率よく、楽して、長く記憶に残るような集め方をするに越したことはない
 昨日、読者のcogicoさんからいただいたコメントは、本日の第2章と共通しているので、再掲させていただく。
>今マイブーム(古い言葉)なのは今回扱われていたマインドマップです。
>全体感を把握する事を常に意識していれば、詳細部分は記憶しなくとも
>考えればおのずとある程度の枠や雰囲気は掴めるものででしょうね。
>頭の中で論理的にインスピレーションのように、短時間で正しい判断が
>できるよう日々訓練する事が(急がば回れ)重要ではないでしょうか。
>また、人間はある程度コツを得てしまえば、加速度的に向上する気づきの
>シナプスが活性化するように思います。

 この一文は、非常によくできている。
 まさに、第2章を総括している。kougaiの余計な解説は要らないくらいだ。
 まず、どんな科目でも全体像をつかむことが重要である。
 学校の勉強しか経験のない方にはわかりにくい。
 教科書を使った授業では、1ページ目から、少しずつ重箱の隅をつっつくように、牛のようにノロノロと進んでいったはずだ。これを耐え抜いた者が、試験でいい成績をとるシステムになっていた。
 ところで、資格試験や昇進試験など、俗に言う「大人の勉強」においては、最初の1ページから地味に進める勉強は、大きな苦痛を伴う割りに、よい結果は出せないと言われている。
 なぜなら、暗記よりも論理、計算力よりも読解力、忍耐よりもひらめきが求められているからだ。
 資格試験について大胆に言わせてもらえば、kougaiだったら、五者択一であれば、ぜんぜん勉強していなくても、文章題なら4割ぐらいは取れる自信がある。
 大人の勉強法を知っているだけでも効果はある。それだけ義務教育の勉強法と異なることを知ってほしい。最初の一ページ目から、一つひとつ辞書を引きながら勉強するというような考え方は捨てるべきだ。
 自分のキャリアに関する試験を受けるのであれば、参考書にすぐ飛びつかず、すでに自分が知っていることから書き出してみるとよい。できれば、マインドマップを使ったほうが効果的だ。
 試験を受けるも受けないも、何も決めていない・・・でも、何かに挑戦したい、という人も、関心のあること、やりたいことををマインドマップに書きだしてみる価値はある。

 「加速学習法」では、マインドマップを「学習マップ」と呼んでいる。
 やり方は、ノートの中央に「主題」を書く。「主題」は、言葉でなく絵やシンボルでもいい。
 次に、主題に関係するキーワードや語句を、中央の「主題」から線を伸ばしつないでいく。さらにキーワードや語句を枝分かれさせ、放射線状に観念を広げていく。
 そして、枝を広げていく段階で、わからないところが出てくる。枝がそれ以上、伸びないところが何か所もでてくる。
 そこから、勉強を始めるようにすると、主体的に勉強を始めることができる。
 たいくつな授業とは違い、自分の意思で進める勉強は、驚くほど、身につきやすく、深く記憶に刻まれやすい。
 マインドマップ放射線思考
 http://johou.net/mindmap.htm
 事実を収集する方法として、もう一つ注意すべきポイントは、五感をフルに使うことである。
 昨年の9月にNLPについて特集を組んだことがある。
 自分のまわりの世界を知覚するときに好んで使う五感は、人によって違うということを説明したが覚えておいでだろうか。
 使う言葉でだいたい、あなたが、視覚型か、聴覚型か、あるいは身体(運動)型なのかわかる。
《視覚》
 見る、絵、焦点、想像、場面、空白、輝く、明らかにする、調べる、
 見つめる、図示する、注目する、示す、探求する、心に描く、
 あなたの言うことはわかる、わたしの考えはぼやけている、
 私にはそう見えます、疑いの影さえない、盲点があります
《聴覚》
 言う、アクセント、リズム、共鳴する、鳴り響く、尋ねる、強調する、
 告げる、批評する、聞く、響き、怒鳴る、無言、声の、話す、沈黙、
 調和した、静かな
 波長が合う、調和して生きる、ちんぷんかんぷん、一語一語、前代未聞、
 耳に快い、はっきり表現された、いわば、はっきりと
《身体感覚》
 さわる、扱う、接触する、押す、固い、暖かい、冷たい、捕まえる、
 圧力、敏感な、手応えのある、緊張、柔らかい、削る、重い、
 苦しむ、
 連絡します、考えがわかる、骨身にしみる、バラバラになる、
 白熱した議論、話しについていけない
 あなたは、何型であろうか。
 情報を取り入れるとき、つまり勉強するときは、自分の型に合わせると効率がよいと言われている。
 視覚型は、イメージ派と論理派に分かれる。
 イメージ派は図や、イラスト、ビデオなどが効果的。
 論理派は、読書、ドキュメントによる勉強が効果的。
 聴覚派は、授業、講演、テープ。
 身体派は、実地学習、書く、下線をひく。
 さらに、効果的な方法は、これらの組み合わせて行う勉強である。
 それを本書では、「多重感覚学習」と呼んでいる。
 参考書を読むのにも、単に目で読むだけでなく、蛍光ペンでチェックを入れ、ドラマチックに読み上げたり、声で要約したり、メモにキーワードを抜き出したりすると効果的である。
 昨日のコメントで、読者の稚気さんがおっしゃっていた、奥さんや会社の同僚に、内容を要約して聞かせる方法は、知識を自分の血肉にするために、大変有効な「多重感覚学習法」である。
 第1章で「勉強に必要な心の準備」を、
 第2章で「効率的な知識収集の方法」を、それぞれ習得していただいた。
 第3章は「学んだことの意味を探求する」がテーマだ。
 私たちは、学習するとき、8つの知能を使う。
 【言語的】・・・講演、書物、会話
 【論理的】・・・数学、論理的説明
 【視覚的】・・・方向感覚、図解
 【音楽的】・・・リズム感、音感
 【対人的】・・・コミュニケーション
 【内面的】・・・想像、空想
 【身体的】・・・手先の器用さ、運動感覚
 【博物学的】・・自然観察力、環境に詳しい。
 あなたも、この中に得意な分野が一つか二つはあるはずだ。世の中は、【言語的】と【論理的】が、高い学歴に反映するようになっている。つまり、人はみな得意分野が異なるのに、世の中の仕組みは、片寄った領域にある人ばかりが、よい学校に行けるシステムになっている。
 大人になったのだから、今度は自身で得意な知能を活かして、学習成果を上げるべきだ。
 この章でも、それぞれの得意分野を活かした「多重機会型学習」を推奨している。それぞれ得意分野ごとに勉強の仕方のヒントが述べられている。

【論理的】
 体系的にものを考えることができる人だ。だから、学習内容を分析する必要がある。つまり、参考書に書いているとおり受け取らず、自分で分析してみることが必要だ。そのとき、使えるのが「こ・れ・ゆ・か・い(これ愉快)」
 こ(根拠)・・・何を根拠にこのようなことを言うのか
 れ(例)・・・・自分が知っている例を探してみよう
 ゆ(ユニーク)・この主張や理論のユニークなところはどこか
 か(仮説)・・・ここで出している仮説は正しいか
 い(意見)・・・意見を求められたとき、自分ならどう答えるか
 このように分析しながら進めると、よい成果をだすことができる。
【言語】
 自分以外の人が書いた文章を覚えようとするのではなく、自分の言葉に置き換えて覚えようとすると効果的だ。テキストを閉じて、あるいは黒板から目を離して、自分の言葉でメモを取るようにする。

【内面】
 興味が向かないと、なかなか勉強が始められないタイプだ。まず対象に対して人間的関心を持てるようになるためのアプローチが必要だ。「理論をつくった人の時代背景」とか「これを書いた人の困難と失敗」を調べ、興味を持つようにする。

【視覚】
 昨日、解説したマインドマップが効果的だ。

【対人】
 最高の学習方法は、勉強したことを、他の人に教えることだ。自分が本当に理解していないと説明できないので、勉強にも熱が入る。

【身体】
 シミュレーション、ローリングプレイあるいは書いたり読み上げたり、
 勉強の方法にバラエティを持たせる。

【音楽】
 リズムをつけながら覚える。ラップにしてみる。BGMをかけながら勉強する。

 あなたが親の立場であれば、論理や言語に偏重した現在の教育システムでは足りないところを、あなた自身が子どもに対してカバーしてあげることだ。子どもの特性を考えながら、学習の方法(戦略)を教えてあげるとよい。

 第4章は、「記憶を活性化する」である。
 記憶法に関する本は何冊も読んだが、「コリン・ローズの加速学習法」の第4章は、それらが凝縮して詰め込まれている。
 記憶法に関する書籍には、脳の仕組みや実験データ、記憶力が増した後のバラ色の生活などに大半の紙片が割かれているもの多い。
 本書は、勉強法に関するあらゆる分野の簡単な実験データとそれに基づく理論がコンパクトにまとめられ、幕の内弁当のように詰め込まれている。第4章の記憶力を読むだけでも、2,3冊分のエキスが詰め込まれており、飢えた人には、ご馳走と映り、食べ飽きた人には食傷気味に感じるかもしれない。
 本書に書かれた効率的な記憶法の一部を紹介する。
【記憶する時間は短めに区切る】
 英単語を30分かけて覚えるとする。30分を一つのスパンと考えると、始めたばかりの時間と、終わり間際の時間は、記憶する率が高く、中ほどの時間は記憶する率が低くなるそうだ。いわゆる中だるみ現象を起こしてしまう。
 このため、記憶に使う時間は、短めに区切って、間に短い休み時間を入れると、記憶する率は、高止まりで推移するらしい。 一度に続ける時間は20分が限度、それ以上続けると中だるみを起こすそうだ。

【環境を変える】
 ところで、日常と異なる現象は、記憶に残るものだ。
 毎日の通勤時に電車の窓に映る景色より、出張で車窓に映る風景の方が印象は深い。旅行中の思い出は長く記憶に残っている。記憶の得意な人は、通常と違うと雰囲気をつくり、強く印象に残そうと努力する。

【自分流に分類する】
 情報は、グループに分けたり、カテゴリーに入れるなど整理することで覚えやすくなる。
【記憶の基本は1にも2にも「復習」】
 覚えることが苦手な人に、短期記憶はできても、長期記憶が苦手な人が多い。苦手と言うより、積極的に長期記憶につなごうと努力していないのかもしれない。
 見たり、聞いたり、味わった「事実」を、視覚的記憶、聴覚的記憶、身体的記憶を総動員して長期記憶に落とし込まなければならない。
 面白い実験結果が本書で示されている。暗記学習で、最初の暗記に使う時間と2回目の復習に使う時間をいろいろ変えてみて、どの配分が一番たくさんの単語を覚えられるか実験したときのデータである。
 
最初の勉強に100の時間をあて、復習しなかったとき、覚えた単語数は65個。
 最初に80の時間を勉強にあて、復習に20の時間をあてたときは92個、
 最初に60、復習に40のときは、 98個、
 最初に40、復習に60のときは、105個、
 最初に80、復習に80のときは、137個の単語を覚えられたという。

 人間の脳は、最初の1回では、あいまいにしか記憶できないようになっている。ということは、最初の1回は、さっと目を通し、2回目の復習からに時間配分を多めに取った方がいいということが言えそうだ。
 先週紹介した「抜く力」で、人間の脳と鳥の脳の違いを説明したことを覚えているだろうか。
 人間は、人の顔を覚えるとき、大まかに記憶する。鳥は大まかには記憶せず、正確に記憶する。
 人間は、大まかに記憶しないと、次に同じ人に会ったとき、ちょっとでも髪型を変えていたり、帽子をかぶっていたりすると、わからなくなるので、最初の出会いではファジーにしか記憶できないという話であった。
 友達や恋人とケンカしたとき、仕事で失敗したとき、逐一、鮮明に覚えていたのでは心を病んでしまう。だから、あいまいがいいのだ。
 年の初めに、紹介した「なぜ、占い師は信用されるのか?」で、占い師は『コールドリーディング』という裏コミュニケーション術を使っているという話をした。
 コールドリーディングでは、相手の心を読み違え信頼関係を失いそうになったとき、相手にショックを与えるよう関係ない話を突然切り出し、不利な記憶をいっぺんに消し去ってしまうという高等テクニックがある。
 人間がものを忘れるのは、次に新しい情報が入ってくるため、さっき覚えたばかりの情報を忘れてしまうからだ。つまり、勉強した後、いろいろ他のことをしていたら、せっかく覚えた内容を忘れてしまう可能性が高いのだ。だから、最初の勉強と、2回目の復習の間に中断を儲けるとしたら、「睡眠」が最も効果的であるそうだ。
 睡眠中の脳は、電源を切ったコンピュータのようになり、小さなバッテリーが、その日1日の記憶の整理をしてくれるそうだ(「レム睡眠」と呼ばれる」
 暗記学習については、寝る直前に1回目を行い、翌朝起きてすぐに復習を行うと、最高の結果を得ることができる。